ふうえいウラ話 5


依願退職<1>


 大規模パチンコ店の許可申請については、特に神経を使います。風俗営業の許可を申請するには、営業所の構造基準や営業制限地域、それに営業社自身に関する要件を満たさなくてはなりません。
 今度の話も、パチンコ店の許可申請にまつわる出来事です。
 営業所の構造基準も、制限地域についても基準を満たしており、許可の申請日も近づいてきたある日のこと。パチンコ店を申請する会社の社長が、奥歯に物の挟まったような言い回しで話し始めました。
 「…いやー…実は5年前ぐらい前に、マージャン店で遊んでいて逮捕され、罰金刑を受けたことああるんですが……大丈夫ですよね?…5年は過ぎたかもしれないんですが…」
 なんで、こんな許可申請の直前に!?と驚き、呆れましたが、仕方がありません。事件の経過を弁護士さんか所轄警察署に聞きに行くように指示しました。それでも、「…埼玉でパチンコ店の許可も取っているし…」とブツブツ。本人の態度がいま一つはっきりしません。
 「風適法」第4条第1項には、刑法185条か186条(賭博、常習賭博・賭博場開帳・博徒結合)による罰金刑を受けた場合にも、「5年を経過しない者には許可をしてはならない」という規定があります。
 したがって、事実を確認せずに申請をするわけにはいきません。そこで、申請する予定の警察署へ社長を伴っていき、担当係長に事情を話して、身分関係の書類を調べてもらうことにしました。
 その間にパチンコ店の工事も進み、1、2週間が過ぎました。
 担当係長からなんの連絡もないため、再び社長とともに、工事の進捗状況を報告がてら事件後5年を経過しているかどうか確認しに警察署へ行きました。  担当係長は、いかつい顔をした無口な人でしたが、管轄地域の風俗営業店の経営者たちの間では評判のいい人でした。
 パチンコ店の申請打ち合わせの最後の段階になって、「もう申請をしてもいいよ」と言う係長の言葉に安心し、いよいよ許可申請に取りかかることになりました。
 その時、この話が、警部補だったその係長の警部昇進にからんで重大な事態に発展しようなどとは、誰にも想像できませんでした。

(次号へつづく)






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