ふうえいウラ話 7


依願退職<完>

 パチンコ店の許可手続きで、最終段階の警察本部の検査が中止になるなどということは滅多にあることではありません。しかし、現実にその事態になってしまったのです。
 うなだれた社長によると、「今回の申請を取り下げるように」と警察本部の主任から言い渡されたとのことでした。理由は、社長の前歴に風適法上の欠格事由があったということです。つまり、「マージャン店で遊んでいて逮捕され、罰金刑を受けたこと」が過去5年以内にあったため、申請が却下されてしまったのです。
 申請者の「人的欠格事由」については通常、申請後ただちに調査され、すぐ結果がでます。許可手続きの最終段階で欠格事由が判明するなどということは、まず考えられません。
 なぜ、そんなことになったのか?理由は分かりません。真相はいまだに闇の中です。しかし、その時点では、そんなことを言ってはいられません。何よりも、でき上がったパチンコ店を早く開店できるようにしなくてはならないのです。
 欠格事由が判明してしまった社長を会社の代表から外し、代わりに奥さんを代表取締役として登記し、あらためて許可の申請をしました。その再申請から約2カ月後、無事に許可を取得することができました。
 許可が下りたお礼に、パチンコ店の役員を伴って所轄警察署の担当係長を訪ねると、全く予期しなかったことですが、生活安全課の壁に「担当係長の警部昇進」が掲示されているではありませんか。
 「係長、警部昇進おめでとうございます」と、お祝いとお礼を兼ねたあいさつを済ませ、これで、会社にとって大きなリスクを背負った申請が完了しました。やれやれ……。
 パチンコ店では開店後も頻繁にパチンコ機を入れ替え、そのたびごとに「変更承認申請」をしなければなりません。許可から間もなく、その申請のために警察署へ行ってみると、警部に昇進したばかりの係長が突然、「依願退職」をしたという話です。
 今回のパチンコ店申請での不手際とか、風俗店との癒着とか、係長にまつわる妙な噂が飛び交っていました。
 しかし結局、せっかくの警部昇進を投げ捨ててまでの「依願退職」の本当の理由は分かりませんでした。
 係長は退官後、行政事務職20年の実績特例により無試験で行政書士の登録をしましたが、その後も悪い噂は流れ続け、2、3年で行政書士も廃業……。係長の人生にいったい何が起こってしまったのでしょうか?
 ……風俗営業許可の裏側では、人の人生を左右するような、こんな大きな事件もあるのです。





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