ふうえいウラ話 9


通報<1>

   王さん(仮名)は在日中国人の3世で、東京の有名大学の経済学部を卒業後、20代で貿易業を興し、まだ30代半ばにもかかわらず、大きく事業展開をしています。
 王さんの父親は日本で生まれ育ったため、ほとんど中国語がしゃべれず、王さん自身も学生時代に中国語を勉強したそうです。
 その王さんが、繁華街の駅前でバーの経営に乗り出し、許可の申請をすることになりました。住民票や身分証明書をそろえて、管轄の警察署に許可申請の手続に行くと、担当の係官が許可申請書類を点検しながら「王さん、外国人登録証がついていませんね」と言います。
 しかし、「住民票」があるのですから、当然「外国人登録証」があるはずがありません。そう、王さんは帰化をして日本人になっているのです。
 外国人が帰化をする際、多くの人は日本名に名前を変えるのですが、王さんは母国に対する特別の思いがあったらしく、中国名のまま日本人になったのです。
 『チャイナドール』と名付けた王さんのバーに営業許可が下り、いよいよ開店ということになりました。
 そして、開店当日の朝からは、道路使用許可もちゃんと取得して、チャイナドレス姿の従業員が駅前でチラシ広告を配りました。
 すると、予想外というか、予想通りというか、小さな店は会社帰りのサラリーマンであっという間にいっぱいになってしまいました。料金設定やサービス内容もよかったのでしょう。開店と同時に連日大盛況で、順風満帆!
 そのまま店の営業が順調にいくと思われた矢先に、二人の警察官が店を訪れました。警察官は「『客引き行為をしている』という通報がありました」と言います。
 それに対して王さんは、道路使用許可証を見せ、チラシの内容なども確認してもらい、順法精神にのっとって営業していることを強調し、警察官は「営業活動には十分注意してください」という指示を王さんに伝えて、その場は何ともなく終わりました。
 ところが、どうしたことか、何も問題がないにも関わらず、その後なんべんも警察に通報があり、管轄の警察官も王さんも困り果てることになります。

(次号へつづく)






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